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「ふぅ、やっぱり我が家ね」
自室へと戻るやいなや、ゴロリと寝転ぶ清姫に、縁側の外から声がかかる。
「清姫様、女房にお召しかえの準備をさせております故、まだ寝ないで下さい」
外で控えているはずなのに何故わかったのだろうか。「いつも内裏(だいり)の宴から戻られた後、すぐ眠ってしまわれるでしょう?」そう言われて図星を突かれ、ムッとしつつ、清姫は起き上がる。
「…わかってるわよ。一日でも欠かすと“腹が減って”しょうがないもの」
清姫は忠将とは別の側仕えの女房を呼ぶと、床(とこ)の準備をするよう指示をしたところで、御簾(みす)の向こうから笑う声が聞こえた。
「忠将、お前もいつまでもそこでつっ立っていないで、準備をなさい」
「…クスッ、御意」
庭の土を踏む足音が遠退いて、忠将が従者用の棟へと向かったのを確かめると、清姫もこれからの準備を始める。
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