第一夜

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 かつてその知識は、忠将に植え付けられていた知識だった。  だけど今は違う。  清姫が主であった頃、その理が彼女にはよく理解出来なかった。 ―主と言いながら、何故従者に所有されなければならないのか。  “人”だった時には全くもって理解し難い理であったが、その時はわざわざ理解しなくても、清姫は主で忠将は従者なのだと、それだけわかっていれば良いと思って、さほど気にも止めていなかった。  しかし今は、その理解出来なかった理がわかる。  忠将は自分の“モノ”で、他の奴には渡さない。  忠将の従者は自分だけなのだと、その優越感に浸れる。自分だけの主だと、忠将を縛れるこの“目印”がいかに大事な物なのか理解出来た。  “妖”とはこんなにも悍(おぞ)ましくて、自分の欲求に忠実で、とても愛しい存在。 『だけども愛してはいけない』  主従の間に、愛や恋は必要無いから。  もし、従者が主を愛してしまえば、この関係は断ち切れ、妖の従者は人間の主を“喰わ”なければならない。
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