第壱話 「旅人」

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地下倉庫へと連行されていくゴドラ星人を廊下で見送ると、 シノブはその足でブリッジへと来た道を戻ろうとした。 と、不意に足を止め疑わしげな表情で後ろを振り返る。 「…お前、どっから入り込んだんだ?」 その視線の先・食糧庫と火器収容庫の扉と扉の間に存在する約90cm×100cm程の窪みに、 "ソレ"は身をひそめていた。 見た目は四足歩行で体表が刺々しく、 背中には緑色に輝く鉱石らしい突起物や赤く明滅する発行体部分が見られる。 頭部と思わしき部分には細く湾曲した眼窩に朱色の眼部を供え、 顎と牙を噛み合わせガチガチと鳴らしこちらを威嚇している。 「…スペース○ジラは東宝へお帰り下さいまし」 何故か脳裏に浮かんだ 「ゴジラに比べ青みがかった体色」 「頭部に生えた黄色い角」 「口元に生えたビオランテを彷彿とさせる牙」 「両肩から背中にかけて水晶様の大きな結晶体が2つ生えており、背びれと尻尾の先端も結晶化している」 「腹部の筋肉や内臓がむき出しになっているように見える」 等々のとある宇宙怪獣を彷彿とさせたソイツに、シノブは何を考えたのか後方にある緊急脱出ハッチを親指で示す。 そんな彼女の冷めた表情が気に食わなかったのか、"ソレ"は不機嫌そうに唸り声を上げて飛びかかる構えを見せる。 「フン、一丁前に怪獣か…。  まあ…お前がウチの船に迷い込んだのか、故意で船内に潜伏していたのかはさして重要じゃない。  問題は、だ」 自分の髪を軽くクシャクシャと掻き混ぜると、シノブはその場にしゃがみ込んで怪獣と視線を同じ高さに合わせた。 「船内に変なバクテリアやら病原菌を持ち込まれてないかが心配要素なんだよ!!  大変なんだぞ、一旦密閉された空間内で発生した病気やら疾病やらを駆除するのは!?  毎日毎日強アルコールと分解バクテリアを散布しなくちゃいけないこっちの身にもなってみろ…」 と、シノブに愚痴愚痴と文句を言われた怪獣は暫しの間呆れているのか呆然としているのか、口をだらしなく開きっ放しにして黙って彼女の顔を見上げている。
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