第壱話 「旅人」

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「コラコラ麦ちゃん、このお兄さんだってお仕事中だから」 「いえ、僕は構いませんよ隊長。こんなに小さな女の子なんですから、男の子達とは違って基地の見学は退屈に感じるでしょう。…良ければ仮眠室に彼女を運んで来ますよ、アンヌ隊員に届け物を渡しにいこうとしていたんで」 そう言うと男性隊員は、するすると私を背中へ抱き上げ背負う。 「そうか?すまないな、ダン」 申し訳なさそうな隊長に、ダンと呼ばれた隊員はいえいえと言いつつ廊下を進む。 大人の背中は、両親と知り合いのキリヤマ隊長のしか知らない私は暫くの間、もぞもぞごそごそと身動ぎし落ち着く状態を捜し回る。 漸くダン隊員の肩に短い腕を伸ばし、手のひらを掛けることで安定し再び゙ふぁあ~っ゙と大きい欠伸を噛み締めた時に、あれ?と首を傾げた。
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