第壱話 「旅人」

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「ん?どうかしたのかい、麦ちゃん」 私がダン隊員の顔を覗き込もうとしているのに気付いたらしい、ダン隊員はおんぶからだっこに私を抱き直して尋ねてきた。 『…おじさん、おとうさんのにおいがする』 「おとうさんの、におい?」 『うん。おひさまのあったかいにおいと、かぜのまじったいいにおい…』 そう言って、思わず頬擦りしてしまった。そんな私の反応に呆れて物も言えないのか、ダン隊員は苦笑いを浮かべながら私を抱く腕を直す。 暖かい腕に抱き抱えられながらゆっくりと歩くダン隊員のリズムに、いつしかまたうとうとと目を細め始めた私に、ダン隊員はちょっと小さな声でヒソヒソと話し始めた。
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