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グルルルラァッ――
唸り声を上げ、闇の中の獣は男に襲いかかる。
地を蹴る音に、
闇の中迫り来る紅い眼光に、
男は息を詰め、ギュッと目を瞑った。
そんな男の耳に届いたのは――
「うぉおりゃあああっ!!」
まだ幼さを残す少年の雄叫び。
続いて――
グギャアアアッ
獣の苦痛の混じった悲鳴。
「おい、こらオッサン」
少年の場違いなほどのんびりした声に、男は恐る恐る目を開ける。
そこには垂れ気味の菫色の瞳に闇色の髪をした少年。
「オイラがアイツの相手してる内に早く逃げろ」
「し、しかし、君は――」
「ん? オイラ? オイラは大丈夫だって、リュウもいるかんな」
「あぁ、心配は無用だ」
下方から聞こえた声に、男は視線を下へ移動する。
「ひっ――!?」
そこにいたのは白く長い体の蛇のような獣。
背中には毒々しい赤色の刺があり、額にはガラス細工のように薄水色の飾り。
瞳も涼しげな水色だ。
それでも獣に変わりは無く――…
怯えた男の表情に、少年はニッコリ笑って言った。
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