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おかしいのは、私がこんな場所に、理由もわからず、得体の知れない男と二人きり(?)と言うことと。
「………私アリスって名前じゃないんですけど」
男が私をアリスと呼ぶこと。
恐らく、いや確実に人違いだ。
私は男に誤解を解くべくそう言った。
しかし男はあぁそうですかと頷く事はしなかった。
それどころか
「いいや、君はアリスだよ」
と、まるで私を隅々まで理解しているとでも言うかのような確信を待った声でそう言い放った。
彼が誰と間違えているのか皆目検討もつかないが、 どうやら彼がアリスと呼ぶその人物は、酷く私と似ているらしい。
だが、だからといって私がアリスでない以上、誤解を解く以外どうしょうもない。
あまり根気強い方ではないのだが、私はもう少しだけ、彼の誤解を解こうと声を張った。
「勘違いです、私はアリスじゃないんです!」
はっきりと言い放った私を、男は全く信用していないようだったが、少しだけ私を見つめ直した後、ふぅんと自らの顎をそっと掴んだ。
赤に影を落としたような深紅の瞳が、私に問いかける。
「……じゃぁさ。君の名前、教えてよ?」
そう聞かれて初めて、私は気づいた事がある。
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