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ボスン!
言うまでもなく、状況は変わらなかった。
デジャブのように繰り返されるだけ。
「アリス、もしかして場所を移動したいの?」
「構わないで!リターン!リターン!!リターン!!!」
ヘラヘラと話しかけるウサギ男にぶつけたいイライラを、私は言の葉に紡いで唱えた。
刹那―――。
ブボン!!!!!!
私の思いの強さだけ忠実に力に変え、指先から爆発音が轟く。
それに見あった煙の量に、勿論視界は遮られる。
「………最悪」
ここは魔法が使えないのだろうか。
リターンが使えなければ、私はあそこへ帰れない……。
やだ、いなくなったリルを、探さなきゃならないのに……。
「………っ……」
「アリス、泣いているの?」
見えないはずなのに、ウサギ男がピシャリと言い当てるから、私は余計に泣きたくなった感情を無理矢理圧し殺して言葉を絞り出した。
「あなたがこんな所に私を連れてきたせいよ、帰してちょうだい」
今まで魔法に頼りきって生きてきた私にとって、魔法が使えないのはかなり精神的にダメージだった。
力なく言う私に、ウサギ男は姿の見えないまま私に言葉を投げる。
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