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一人の坊さんが、一服している居間の隣の部屋、台所では二人の男女が料理の真っ最中だ。
「辛さはこれくらいで大丈夫?」
白いエプロンを着た凛が台所で数時間じっくりと煮込んだカレーを小皿についで、味見役の翔に渡す。
翔は小皿を傾け、一口。
「どう? 口に合う?」
翔の反応を上目遣いで窺う凛に翔は顔を赤くして、
「だ、大丈夫だよ。ちょうどいい」
「本当に? じゃあ私も一口」
動揺を隠しきれていない翔の反応を見ながら、凛は小皿に口をつける。
瞬間、翔の顔が今まで一番赤くなる。動揺も最高潮に達した。
「り、凛……」
「なに?」
「そ、それって……か、か、かん、間接……」
焦り過ぎだよ、翔君。
その様子を見ていた二人の下宿する寺の住職、神野祐三は茶を啜りながら穏やかに微笑む。
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