21人が本棚に入れています
本棚に追加
今では本当に仲良くなった(どうも付き合ってるらしい)二人だが、十日前だったらこんなことは考えられなかった。
十日前、それはちょうど翔が寺に下宿にきた時だ。
その時、施設から来たばかりで、まだ人間不信にも似たような状態だった凛が、初めて翔と顔を合わせた。
――十日前
「よろしくお願いします」
寺の門を背景に、大きなボストンバックを持った翔が頭を下げる。
翔を迎えた神野は、彼を見て頷く。
クセの強い黒髪に、なにかを感じさせる黒瞳。
彼の祖父から剣道などをを指南されていると聞いていたが、無駄な筋肉はなくバランスのいい体つきをしている。
「いらっしゃい。待っていたよ」
神野が笑うと、翔は愛想笑いをする。
この子もいろいろ抱えているな――
最初のコメントを投稿しよう!