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それにどうも最近は『ワンセグ』なんていう凄いものが流行っているらしいから、若い翔なんかにはあまり影響はないだろう。
神野は翔を座布団に座らせ、自らは廊下へ出てもう一人の下宿人を呼ぶ。
「凛ちゃん。居間に来てごらん」
『分かりました』
神野が出した声は大きかったが、返事は決して大きくはないのもかかわらず、はっきりと聞き取れて、かつ耳に余韻を残すから不思議である。
「凛ちゃん? 下宿人は俺だけじゃないんですか?」
座っている翔が、聞いていないと言わんばかりの顔で首を傾げる。
しかし、どこか興味があるような目をしている。
神野はふっと笑い、
「期待するなとはいわない。……いやむしろ君の年頃だと、期待し過ぎといた方がいいかもしれないね」
「どういうことです?」
翔が追求しようとした時、少し離れた廊下がギシギシ軋む音がした。
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