21人が本棚に入れています
本棚に追加
音は次第に大きくなってきて、廊下に立っていた神野には既に音の主、凛の姿が見えた。
彼女は居間の前で立ち止まり、一度神野と目を合わせて居間の中へ入る。
その瞬間、翔は息を呑んだ。
しかし、そんなことはお構いなしに凛は翔の前に座り、
「……はじめまして。柴崎凛といいます。……これからよろしく」
居間に差し込む日の光で輝く艶やかな黒髪を流しながら、凛は静かに礼儀正しく翔に頭を下げた。
その間、神野は翔の反応を見て笑っていた。
凛が顔を上げたあとも、翔は口を開けて何かを話そうとするが、声が出てこない。
完全に言葉を失っていた。
凛の群を抜く、端正な顔立ちと美貌に魂を抜かれたといってもいい。
翔は実際、抜かれているのだろう。
まあ無理もない話だと、神野は頷く。
最初のコメントを投稿しよう!