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「でも、やっぱり私は貴方の意見には賛成できないわ。
だって渉はまだ生きているのよ。
その命を、私たちの手で絶とうだなんて……」
「分かっている。
どれだけ自分が残酷なことを言っているのか。
だが、これ以上渉の命をこの世に無理矢理とどめているのが、渉の幸せなのか?」
「それじゃ言わせてもらうけど、渉の命を絶つことが本当に渉の幸せなの?
渉はもしかしたら“生きたい”って思ってるかもしれないじゃない!」
父さんと母さんの意見は真っ二つに割れ、話し合いは平行線をたどっていた。
渉の人工呼吸器を外すか、否か。
父さんの意見も、母さんの意見も、俺にはどちらも正しいものに思えた。
二つとも渉のことを考え、導きだした答えなのだ。
だからこそ、俺はどちらの意見にもつくことができず、ただ二人の様子を見ていることしかできないでいた。
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