進むために

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「と、とにかく! 大学は綺麗な女の人がたくさんいるんでしょ? あたし、大して綺麗じゃないから、皐君が他の女の人に目移りしちゃうんじゃないかって不安なの……」 蛍は肩を落として俯いた。 そんな蛍の姿を見て、俺は不謹慎にも嬉しいと感じてしまった。 蛍は俺と同じことを考えていた。 人は相手を好きになれば好きになるほど、不安な気持ちも大きくなっていく。 相手を求めれば求めるほど、失うことの恐怖も大きくなっていく。 本当は、自分の想いを全てぶちまけてしまいたい。 けれど、そのことで大切な人を傷つけたくはないし、自分の勝手で縛りつけたくない。 そして、何よりも嫌われたくないと思ってしまう。 俺はそのことを自分でも思い、体感しているからこそ、蛍の不安に全身全霊で答えてあげたいと思った。 .
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