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母さんの刺すような鋭い視線に、思わず俺の身体は強張る。
その俺の様子を見て、母さんの瞳からは怒りの色が消え、力なく口を開いた。
「……もう、十分でしょう。
家族ごっこは終わりにしましょう」
その言葉に、父さんの片眉がピクリと動いた。
「そもそも、私達は血も繋がっていない赤の他人なんだから、一緒に暮らして何になるっていうの?
私達はお互いを必要になんかしていないし、別にお互いの幸せを願っているわけでもない。
一緒に暮らしたとしても、過去の苦しみや悲しみ、押さえようのない喪失感と深い憎しみがつのっていくだけじゃない……」
母さんの瞳は完全に色を無くし、空虚な表情で宙を見た。
「母さん……」
そんな母さんのどこか痛々しい様子に、俺は思わず声をかけた。
すると、今まで色を無くした母さんの瞳が突然、ギラギラと怒りの色を燃やして俺を睨んだ。
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