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「……なっ、何よ。
急に自分だけ良い人ぶっちゃって」
母さんは反発するように父さんを見上げた。
「やってられないわ」
母さんはそういうと、独り背を向けて部屋を出ていこうとする。
「おい、どこへ行くんだ」
父さんが母さんを呼び止めた。
「帰るのよ。
何か大切な話があったみたいだけど、こんな気分じゃ話を聞く気にもならないわ」
「渉の命にかかわる話なんだぞ!」
父さんの言葉に母さんの足が止まった。
「なんですって」
母さんは酷く驚いた表情で振り返った。
「渉の人工呼吸器についての話なんだ。
だから、話だけでも聞いていってくれ。
この問題が解決すれば、お前が望んでいる離婚の話を進めていってもいい」
そういった父さんは、爪が手の平に食い込むほど強く握っていた。
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