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「ちょっ……ちょっと待ちなさい!」
母さんは勢いよく父さんに掴みかかった。
「まさか、貴方がやろうとしてることって……渉の人工呼吸器のことについての話って、まさか!」
「……そうだ。
渉の人工呼吸器を外そうと思う」
パンッ!
再び、嫌な音が部屋の中に響き渡った。
今度は母さんが父さんを平手で叩いたのだ。
母さんの息は荒く、顔も赤い。
刃物のように瞳を鋭くさせてはいるが、その瞳は涙で濡れていた。
「そんなこと絶対に許さないっ!」
母さんの叫びにも似た声が、俺の心に突き刺さる。
一方、父さんは表情を変えることなく、静かに母さんを見つめていた。
母さんに叩かれた頬は赤くなり、それがどれほど強く叩かれたのかを物語っていた。
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