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蛍はずっと病院暮しだったために、遊園地や水族館、映画館でさえも行ったことがなかった。
俺が車で連れて行ってあげると、目をキラキラ輝かせ、子供のようにはしゃいでいた。
そんな蛍の姿を見ていると、こっちまで嬉しくなってしまい、これからは好きな所に好きなだけ連れていってやると伝えると、蛍は弾けるような笑顔を見せた。
そんな幸せな日々が続いたある日のこと。
俺は蛍に“ある人”に会わせたいと伝えた。
蛍にその人の名前を告げたとき、最初は驚いていたがすぐに真剣な表情になり、首を縦に振ってくれた。
俺は蛍にお礼を言い、会う日時を伝えた。
それが今日だ。
強張る体をなんとか動かし、身支度を終えた俺は、車の鍵を片手に外へ出た。
「寒っ……」
外に出た瞬間、刺すような寒さに体を震わせながら、急いで停めてある車へと向かった。
車に乗り込み、エンジンをかけた車は、蛍の家へと向かって滑るように車を走らせた。
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