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蛍の自宅は、俺の家から車で三十分ほどの距離の場所にある。
蛍は父親と実家で二人暮しをしていて、俺と出かける際は必ず俺が家まで迎えに行き、帰りもきちんと送っていく。
最初は「申し訳ない」と言っていた蛍だったが、俺が「蛍と少しでも一緒に居たいからしているんだ」と伝えると、蛍は小さく笑って承諾してくれた。
俺は信号が赤になったのを見計らって、携帯にイヤホンを差し込み、蛍に電話をかけた。
数回の呼び出し音のあと、蛍が電話に出た。
『もしもし』
「もしもし、蛍か?
あと十分ほどでそっちに着くよ」
『うん、わかった。準備して待ってる。
皐君、いつもありがとね』
「いや、いいんだ。
じゃぁ、またあとでな」
そういって俺は電話を切り、耳からイヤホンを外した。
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