笑顔

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「な、にを」 「魔王。お願い」 事態を飲み込む前に、魔王の手により衛兵は灰と化した。 「……笑ってくれ。私の望はそれだけだ」 魔王は姫に向き直る。 姫は、泣いていた。 「約束よ、魔王。 私を殺して」 魔王は悲しい瞳を姫に向けた。 「わたし、疲れたわ。みんなかしこまって窮屈過ぎるんだもの」 涙は止まらない。 「私が約束を果たすのは、お前が私の城に来ることだったはずだ」 優しく姫を抱きしめた魔王は目をつぶった。 「私の約束は全てをなかったことにすること。でしょ?」 姫はそっと魔王を離れ、少し背伸びし、口づけた。 決して長くはないその時間。 魔王は動かなかった。 「なら、こうするしかない、な」 善を知らない魔王は、その手で姫を貫いた。 一瞬の出来事だが、すぐに姫の腹部は血に染まる。 「……お前は、ずっと私のもの」 姫を横抱きにし、静かにつぶやく。 雨とともに姫の血は服に吸い込まれる。 魔王の目から、水が流れた。 「あり、がとう……」
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