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『好きなのに、なー…』
いつもは並んで歩く帰り道を今日は1人で歩く。
いつもくらに繋がれる右手が、凄く寂しく感じた
けど、その寂しさは背中に掛かる重みにかき消された。
「…みっけた…っ」
耳元にダイレクトに聞こえた声は私の大好きな声
ふわりと香る匂いは私の大好きな匂い
私の背中のこの心地いい体温は
『く、ら?』
大好きな彼のものだった。
「なあ、なんでいきなり1人で帰るなんて言うん?」
『それは、』
「なんで、いきなり離れるん?」
耳元で聞こえるくらの声
有り得ないくらい、心臓がドキドキしてる
ああ、やっぱり好きなんだ
「なんで、チョコ…くれんの?」
『くら、いっぱい貰ってたし…いいかなって』
「チョコなら全部謙也にやった」
『えっ?』
「今日、お前からチョコ貰うの楽しみにしてたんやけど」
『……』
「なんや俺の事避けとるし、前みたいに笑ってくれんし、
俺のこと、嫌いになった?」
凄く寂しそうで悲しそうな声色で呟く、くら。
『…っ』
「…俺な、お前の笑顔…めっちゃ好き。一目惚れやった」
『え?』
「なんて綺麗に笑う子なんやろーって…最初はな?見てるだけで良かったんや」
ぎゅっと腕に力が入るくら
「せやけど、俺だけに笑ってほしいって思った、他の奴に笑ってるの見ると、胸がぎゅーって苦しくなんねん」
くらも私と一緒?
「でもな、こんな嫉妬心知られて嫌われてしもうたら…俺、一生立ち直れへん
だから、我慢しとったんやけど…もう、無理みたいや」
『それってどういうっ』
くるっと身体を回され正面から抱き締められる。
『くら…?』
「俺以外に笑わんで?
俺以外に触らせんで?
俺だけのもんで居て?」
『っ、、』
不安そうに問いかける声
微かに震えてる私を抱き締める腕
すべてが、愛おしく感じた
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