序章-駅から徒歩30分-

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さて、この学園に入って初めてのオリエンテーション的なホームルーム…… まず俺が行動にしたのは、クラスメートの名前と顔を覚えることだ。 後悔しない高校生活を避けるためには、共に過ごす仲間達とのコミュニケーションは最低限だろう。 自己紹介とかは、出身中学、趣味、得意科目と、普通でいいんだ。 問題は、これが終わった後。 全体ではなく、対人で話をすることが大事だ。 こういうのは、待っていてはダメなんだ。 日本人の悪い傾向でな、周りが行動するまで黙っているというケースがあるんだ。 それが鎖のように繋がり、悪循環していくものなんだ。 それを断ち切るのが俺だ、という人間が一人でもいたら解決するんだがな。 それは、今回は俺が買って出てやるぜ。 そして、池とかに石を投げ入れた時に出てくる、徐々に広がっていく波と同じように、隣の席から徐々にクラス全体に会話の輪を広げていくんだ。 その成果もあってか、放課後にはほとんどの生徒と触れ合うことに成功した。 高校生活初日、最高のスタートだ。 その日は徒歩30分の帰り道を気分よく歩いて帰れそうだ。 しかし、気がかりなことが一つだけ、俺の中でモヤモヤと霧のように立ちこめられた。
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