始まりはいつだって突然だ。

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「そう。それは残念だわ」 「すまない」 「じゃあ代わりに別のこと聞いてもいい?」 「答えられることなら喜んで」 案外あっさり引き下がってくれたことに、内心安堵しつつ無難に返答した。 「それ」 女性は、今しがた付けたばかりのロケットブースターを指差し 「車用にそんな大層なパーツって売ってるの? もし良ければメーカー名教えてくれないかしら?」 そう尋ねられた。 この人もロケットブースターを付けたいんだろうか? 女性にしては珍しい。ってか普通はマンガや映画の世界ぐらいでしか付けないから! まあいっか。 それぐらいだったらお安いご用だ。 「こいつは車用じゃないよ。 メーカーが作ってくれてたら、俺ももうちょい楽できたんだけどね。 あんたも付けたいのかい?」 「まあそんなところよ」 「へぇ、珍しいな。 ま、いいや、お教えしますよ。 こいつは六菱重工製のmr-45の背面バーニアを使ってるんですよ」 「mr-45?」 まあ普通の人は型番なんて言われても分かるわけないよな? mr-45ってのは、軍で使われてる二足歩行の人形兵器の型番だ。 と言っても、mr-45は兵器と言うより作業用ロボットってのが正しいけどな。 兵器として作成されたはいいが、そこまでの性能はなく、かといって眠らせておくには勿体なかったそうで、仕方なく作業用ロボットとして使われることになったのだ。 それが10年近く前になるので、今では作業用・軍事用共にハイスペックなものが使用されている。 俺が使うのは車のロケットブースターとしてなので、これぐらいの型落ちぐらいで丁度いいのだ。 ……安かったし。
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