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一体どうしろと言うのだ?
俺は人殺しの手伝いなんてしたくないから、合格して軍に所属するのは嫌だ。
かといって、軍事裁判とはいかなるものなのか想像もつかないし、最悪の場合、国家反逆罪で死刑にされかねない。
知ってるか?
放火と殺人は刑が重く、無期懲役や死刑判決になるが、国家の転覆を企てた場合は、死刑しか選択肢がないんだぜ?
まあ一つの時点で、選択肢というのも変な話だが。
それはさておき、まさに前にも後ろにも行けぬ状態だ。
それで俺は
「どうしてこうなった?」
と頭(かぶり)を振るしかなかったのだ。
そうこうして悩んでいると、来客を告げるチャイムが部屋に鳴り響く。
ここは軍の施設内の、俺に一時的に割り当てられた宿舎で、ホテルの一室のような作りになっている。
しかし、部屋から出ることは叶わず、謂わば軟禁されている状態だ。
俺が逃げるとでも思っているのかね?
いくら俺が馬鹿でも、流石に見ず知らずの軍の施設から抜け出せるわけなどない、ということは分かる。
それはともかく、軟禁されているのだから、俺がここにいるのを知っているのは、恐らく一部の人間だけだろう。
小林少将か食事を運んでくれる人か俺の知らない一部の関係者か。
この時間なら……。
思考の海に落ちていると、再びチャイムがなる。
「……」
よし!
ここは無視してみよう。
狸寝入りだ。
そうと決まれば俺の行動は早かった。
すぐさまベッドに潜り込み、勢いよく布団を被る。
そして、再度鳴らされるチャイム。
暫くの沈黙、待つこと30秒ぐらいだろうか?
「ふえええぇ。
水嶋さんが出てきてくれないですぅ」
というなんとも情けない声が聞こえてきた。
やはりアイツか!
ってか、軟禁されているんだから、部屋のロックは俺が開けれるはずがない。
故に『出てきてくれない』ではなく、出られないのだが。
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