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さあて、今日の試験で生き残るやつはどれだけいるだろうな?
試験官をするのは面倒だが、どんな奴が入隊するのかは楽しみでもあるのだ。
合格基準が、普通の試験とは異なる部分も面白くはあるが。
まあいい、会場に着いたことだし、そろそろ説明を始めることにしよう。
「ではこれより、試験内容を発表する」
受験者は緊張しているのだろう。
喉を鳴らす音が聞こえるほどだ。
「試験はこのmr-60の廃棄機種を使って行う。
廃棄機種とは言っても、ちゃんと整備すればまだまだ動かせるものだ。
気を抜いて怪我などしないようにな」
実物の人形兵器を間近で見たせいだろう。
殆どの受験者はより緊張の色を濃くしたようだ。
「合格基準は、今はスクラップ同然のコイツを、『動ける』ようになるまで整備または修理すること!」
受験者がざわめく。
そりゃそうだろう。
一般に公開などされていない軍の人形兵器を、設計図や取説も無しに動かせるようにしろと言うのだ。
普通はあり得ない。
だからこそ、この試験は面白いのだ。
さて、何人がこの試験の真意に気付くことやら。
だが、俺『達』だって鬼じゃない。
「特別に最初だけヒントをくれてやる。
コイツは暫くエンジンを起動していない。
つまり、外部からの電力の供給が必要だ。
mr-60側のケーブルは繋いであるから、『その』ケーブルの中から、外部電力供給用のプラグを探せ。
ヒントは以上だ。
尚、質問は受け付けない」
受験者は絶句している。
そりゃそうだ。
『その』ケーブルとは言ったが、此処にあるケーブルの本数は、優に一千本を越えている。
整備班に配属されて暫く経つ俺でも、正確な本数は把握していない。
毎回、この『電源探し』で平均十五分は掛かるのだ。
ちなみに、今までの最短記録は九十二秒だ。
それでは……
「試験開始!」
受験者の悲鳴など無視するかの如く、試験は開始された。
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