始まりはいつだって突然だ。

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「そっすか。 じゃあどうすっかな?」 「その前に……重大な問題がある」 「?」 工場長は、普段にない真剣な眼差しでこう言った。 「ゴーストバ○ターズに出てくるのは、マシュ○ロマンじゃぞ?」 「えっ、嘘?」 「ホントじゃ」 「そう言えば、青い帽子被ってたような気もする……」 「やれやれじゃ。 自動車工場で働いとるのに、タイヤメーカーのマスコットを間違えてどうする?」 「なんてこった!」 余りの衝撃に頭を抱えて踞った。 って言っても、未だに全身泡まみれなので変な物体にしか見えないだろうが。 「50過ぎのおっさんに思考を読み取られた挙げ句、間違いを指摘されるとは!」 「ショックなのはそこかい! しかも誰が50過ぎのおっさんじゃ! 工場長を敬わんか!?」 「えーっ? だっておっさんには違いないじゃん。 それともジジイの方が良かったっすか?」 「…………お前減俸な」 「そ、それはご勘弁を! さっきのは冗談っすよ、冗談!」 慌ててフォローを入れる。 減俸なんてされた日には、俺の趣味にかける金が足りなくなるじゃないか。 今でも切り詰めてやってるって言うのに。 そんな風に工場長とジャレあっている中で、頭を抱えている人物がもう一人いたことなんて俺には知る由もなかった。 「あれが……ホントに『あの』水嶋瑞希?」 緑の軍服に身を包んだ女性は、俺を指差して隣にいる男性に問いかけた。 「ええ。 彼に間違いありません」 「私、人選間違えたかしら?」
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