忘れえぬ 光景

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掌は擦りむけ血がにじんだ 痛いというより 痛いはずだと思うだけで この異様な状況のなか 自分の痛みも他人事に感じるくらい 気持ちは別の世界にいき 麻痺していた 傘を引くと そいつはよろめき その瞬間横から 太もも裏辺りを思い切り蹴ったら そいつはよろけて 向こうへ転がり そこにいた K大生に捕まっていた 仲間や関口は? 心配になり見たら 関口は四人に囲まれていた そのうちの二人に襲われながらマムシみたいな顔でそこのリーダー格に殴りかかっていた 時間がたつにつれ かなり重症をおう者も出てきた こちらも先程から しつこく 蹴ってくる奴がいて 蹴られた足がうずき出していた 我々に焦懆感が蔓延して来たように感じた時 警察官が おしかけてきた それこそ 一斉に学生達がちらばり あたり構わず 逃げ出した 幸い怪我人は多数 というか 怪我していない奴はいなかったけど 死人はでなかった 肋骨折ったり鼻を折ったり顔の腫れてる奴もいたけど 警察官から事情をK大生が聞かれていて 関口がそちらに 向かって行きながら 後ろ手で いけいけとやっている みたら 岡も内田も内藤も もう俺の側にいた 内田『おい行こうぜ』俺『うん』 岡『駅でたらすぐタクシー乗んべ』 俺『何でよ』 岡『待ち伏せされたらヤバイし』 駅を出たら 駅前は人だかり 関係ないふりして すぐにタクシーをのり 中野方面にいってもらった 車の中では 誰もが無言 俺も擦りむけた掌みていた 陸橋をくぐったとき 新大久保駅が見えた なんか泣きたいようなわめきだしたいよう憔悴感に襲われた 身体中の力が抜ける ただ 頭の中に あの黒い塊 電車の中が真っ黒な光景が戦慄とともに消えない 途中電車に乗り換え 帰宅した その間の記憶はほとんどない ずっと目に浮かぶ黒い塊と対陣していた 目に映る景色はうつろに白黒だった様に思う酷く疲れたけど その夜はあまり 眠れなかった
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