35人が本棚に入れています
本棚に追加
『車、一回転してましたね。生きていたのが奇跡ですよ』
隣で付き添ってくれているさっきの消防士が笑顔を浮かべる
車、一回転してたんだ…
あの衝撃が蘇り、身体が震える
『わたし…頸折れてて、大丈夫なんですか?わたしの身体は動くようになりますか?』
激痛が走り続けている頸。わたしの身体は動くようになるの?
『普通は折れた場所が悪ければ、死んでしまうけれど。
運が良かったですね、こうして生きているじゃないですか』
そうだ、わたしは生きている
『大丈夫。生きているんだから。希望を捨てなければ、大丈夫
検査しなければわからないけれど、生きている限り、どうにでもなりますよ』
不安なわたしを安心させるための優しい笑顔。勇気づけてくれる笑顔
…わたしは生きているんだ。頸が折れていても、生きているんだ
でも
もしかしたら、一生動かないかもしれない?
嫌な考えが頭を過ぎる
…いや、希望を持とう。生きていれば、どうにかなる、きっと
生きて、助けられたことに感謝しよう
そう
これからは、自分の人生に後悔しないように生きよう
毎日を大切に生きて、真実の愛を見つけよう
右手を微かに動かす
きっと動けるようになる
頑張ろう
救急車のサイレンが、白くなり始めた世界に鳴り響く
これがやり直す為の合図。新しい人生の始まり
生きてこそ
完結
最初のコメントを投稿しよう!