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『車、一回転してましたね。生きていたのが奇跡ですよ』
隣で付き添ってくれているさっきの消防士が笑顔を浮かべる
車、一回転してたんだ…
あの衝撃が蘇り、身体が震える
『わたし…頸折れてて、大丈夫なんですか?わたしの身体は動くようになりますか?』
激痛が走り続けている頸。わたしの身体は動くようになるの?
『普通は折れた場所が悪ければ、死んでしまうけれど。
運が良かったですね、こうして生きているじゃないですか』
そうだ、わたしは生きている
『大丈夫。生きているんだから。希望を捨てなければ、大丈夫
検査しなければわからないけれど、生きている限り、どうにでもなりますよ』
不安なわたしを安心させるための優しい笑顔。勇気づけてくれる笑顔
…わたしは生きているんだ。頸が折れていても、生きているんだ
でも
もしかしたら、一生動かないかもしれない?
嫌な考えが頭を過ぎる
…いや、希望を持とう。生きていれば、どうにかなる、きっと
生きて、助けられたことに感謝しよう
そう
これからは、自分の人生に後悔しないように生きよう
毎日を大切に生きて、真実の愛を見つけよう
右手を微かに動かす
きっと動けるようになる
頑張ろう
救急車のサイレンが、白くなり始めた世界に鳴り響く
これがやり直す為の合図。新しい人生の始まり
生きてこそ
完結
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