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通い慣れた通学路を通り家までの道のりを辿る。
母はこの時間帯は確か仕事に行っているはずだ。
家に到着し、鍵穴に鍵を差し込む。しかし予想に反して既に扉は開いていた。
「誰かいるのか?」
すると、中からは聞き慣れた声が返ってきた。
「お帰りリュウ。ちゃんと手、洗いなさいね」
どうやら今日は仕事が休みらしく母さんが帰ってきている。
想定内の出来事に安心し、言われた通り洗面所へ向かう。
「ハイハイ、了解っす。仕事休みだったんなら言っといってくれよな」
面倒臭そうに返事をしながら、洗面所の前に立ち薬用洗剤のポンプに手をかける。手についた泡を洗い流そうと思った時、台所から母の声が聞こえてきた。
「帰る途中にヒマワリ見なかった? お使い頼もうと思ってたんだけど」
ヒマワリとは夏場に見かけるあの黄色いヤツではなく、我が双子の妹の名前である。
名前は同じだが、華麗に大輪の花を咲かせる向日葵とは対照的に、乱雑で荒々しい華を咲かせるのがヒマワリである。
当然だが、苗字は俺と同じ夏目。
フルネームで夏目 姫朞(なつめ ひまわり)という。
生まれたのがほんの少し俺のほうが早く、兄ということになっている。
しかし妹はそれが気にくわないのか、呼ぶときは必ず呼び捨てだ。
「今日は部活で遅くなるらしいぞ。俺が行ってこようか?」
「助かるわ~じゃあお願いね。欲しい物は紙に書いてかばんに入れてあるから」
玄関口で靴を履きながら母からメモの入ったエコバッグを受け取る。
自宅からしばらく歩いてショッピングモールに着いた。早速、今日のメニューを確認する。
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