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「まずはカレールー、今夜はカレーか」
ん? まてよ。そういや、二日前、四日前もカレーだったような……と、母の手抜きにふと気づく。
「やるな。母さん」
わざと違う食材を買ってやろうか、そんな度胸すらないのに心の中でだけは抵抗してみる。
食品を買いに行く途中なのだが、ゲーム売り場へついつい足を運んでしまう。
新作のゲームでてないかな。などと探していると、ショートヘアの女の子が話し掛けてきた。少し幼い外見である。
「“チョコバナナシューティング”っていうゲーム、ここに売ってますか?」
幼い少女に似合うかわいらしい名前のゲームだな。でもそんなゲームタイトル聞いた事も無いし、欲しいとも思わない。
……でも、興味だけはすっごく湧いた。
「ここって結構品揃えいいからなあ。ここに無かったら売ってないんじゃいか?」
「…………っ!」
少し考えた後、その女の子はこちらをとっさに振り返った。俺の顔を見て、やっと気づいたらしい。
「すっ、すみません! あの、つい探すのに夢中になってしまってて、定員さんと間違っちゃいました」
バカだな。とか頭の中で思いながら白々しく真摯な対応をとることにする。
「気にすることないよ。じゃあ俺は他に買い物があるから」
そう言いながら食品売り場に向きを変える。
「あのっ……」
「?」
どうしたのかと思い、女の子を振り返る。
「ありがとうございましたっ」
女の子は静かにこちらへ向けて手を振っている。わざわざ礼を言うために呼び止めたのか。
友達があまりいない俺には、この優しさが心に染みる。
その女の子に手を振り、食品売り場へ足を進める。
「律儀な子だなぁ」
そう呟くと、頭の中で自分の妹とこの女の子を比較してみた。なるほど180度違う。
食材をすべて揃え、買物袋の中身を確かめる。
「これで全部か」
確認を終え、足早に自宅へ向かう。
「暗くならないうちに帰ろう」
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