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「やっぱり。やっぱり、あっこなんだよ。ねーちゃんが教えてくれた。」
鼻水をすすりながら、優樹は言った。
「お姉さんが…。陽菜さんが、出逢わせてくれた?」
アイラインやマスカラが涙で落ちて、絶対ひどい顔。
写真に顔を向け
「陽菜さん、初めまして。亜希子です。優樹さんと仲良くさせてもらっています。ありがとうございます。」
頭を下げた。
(似ていたのは、姉弟だから…。)
「ま、まだ、一緒にお風呂は苦手。入浴剤はたぶん当分無理。ワンピースはちょっと大丈夫。ティファニーは…。大切な時にとっておく。」
手を繋いだまま、あたしの手も持って行って、顔を拭う。
「付き合ってないのに、一緒になんて入らない。 ワンピースは似合わない。仕事以外で滅多に着ない。大切な時はティファニーじゃなくて、ハリーウィンストンがいい。」
あたしも手を引っ張って、顔を拭う。
「あ゙っ゙!! あっこ!!マスカラついた!! 黒くなった!!しかもハリーなんとかって何?!」
パッて、手を離して、あたしより服の心配をした優樹。
ぐちゃぐちゃの顔で
「陽菜さぁーん。゙大切な人゙って、言ったのに、服の心配してるんですー。」
陽菜さんの写真にくっつくように、陽菜さんに言いつけた。
「ちがっ、違う違う違う!!!!ほらっ!!」
って、無理やりあたしの顔を両手で掴んで、伸ばした服の袖で、顔をこすった。
肌色、黒、ラメ…。
迷彩服よりひどいかも。
二人で顔を見合わせて、おでこをくっつけて笑った。
そうして、初めて、キスをした。
陽菜さんが、また優しく笑ったような気がした。
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