-- 一番の安定剤--

2/7
前へ
/273ページ
次へ
どのくらい経った頃かな………。 目の前のソファーに座って、頭を撫でられた。 優樹だった。 撫でる服から、ボードに塗るワックスのココナッツの香りがした。 鼻の奥がツンとして、できるだけ目を動かさないようにした。 「帰ろ?」 あたしの荷物を持って立ち上がり、優しく手をひいた。 「それ、持って?」 冷めてしまったカップを、塞がった手の代わりに、顎で示した。 すぐ近くのパーキングまで、あたしはひたすら足元だけみていた。 キラキラしたバレエシューズがにじんで見える。 キーを開け、あたしを座らせてから、荷物を後ろに乗せて、優樹は言った。 「あっこ。どっか行く?帰る?」 優しい優しい声で、髪を撫でながら。 「…か、える…。」 やっと絞り出した声。 「よしよーし。」 ハーフアップにした髪をぐちゃぐちゃってして、車を走らせた。 >>>>>
/273ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7人が本棚に入れています
本棚に追加