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どのくらい経った頃かな………。
目の前のソファーに座って、頭を撫でられた。
優樹だった。
撫でる服から、ボードに塗るワックスのココナッツの香りがした。
鼻の奥がツンとして、できるだけ目を動かさないようにした。
「帰ろ?」
あたしの荷物を持って立ち上がり、優しく手をひいた。
「それ、持って?」
冷めてしまったカップを、塞がった手の代わりに、顎で示した。
すぐ近くのパーキングまで、あたしはひたすら足元だけみていた。
キラキラしたバレエシューズがにじんで見える。
キーを開け、あたしを座らせてから、荷物を後ろに乗せて、優樹は言った。
「あっこ。どっか行く?帰る?」
優しい優しい声で、髪を撫でながら。
「…か、える…。」
やっと絞り出した声。
「よしよーし。」
ハーフアップにした髪をぐちゃぐちゃってして、車を走らせた。
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