--あたしと優樹--

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「えー。俺は健康的美人なお姉さんがいいなー。まぁ、選んでいいなら、ね。」 いつの間にか横に立って、水平線を見るように遠くを見ながら言った。 「……。ばっかみたい。あははっ…。」 下を向いて、足の指に力を入れる。 海に、何かに、引っ張り込まれないように。 崩れちゃう…。 崩れちゃう…。 呼吸が、また、少し荒くなる。 心臓がドキドキして、手足が軽く痺れてる。 (大丈夫だから…。) ダウンジャケットに忍ばせた、使い込まれたアヒルの絵がついたポーチを握りしめた。 「わかってないねー。うん、もったいない。」 腕を組んでニヤニヤしながら言う。 そして 「そんなにさぁ。力強く掴まなきゃいけないの?流されちゃいなよ。俺、とか。」 ニーッて笑った男。 ちゃんと顔を見た。 なんか、ちょっと、フッて、楽になった。 その言葉に。 その笑顔に。 心が引っ張られた。 痺れかけていた手足が、自由になっていく。 >>>>>
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