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ちらりと彼女を見る。
コートの下に来た、大きめサイズのグレーの厚手のリブニットの袖を伸ばして、手を覆い、両手を口に当てて、はーってして、手をすり合わせて…。
本当に寒かったんだろうなぁ、と思った。
お水と温かいおしぼり、メニューを持って、彼女の席へ。
「お待たせいたしました。」
「ありがとうございます。」
ペコリと頭を下げ、おしぼりを幸せそうに手にした彼女。
細い指。
綺麗な淡いすみれ色のネイル。
素直に、可愛い、と思った。
メニューのドリンクのページ、"tea"と書かれた箇所をしめしながら
「ダージリン、アッサム、セイロン、ウバ、ディンブラ、キャンディ。あとはブレンドティとフレーバーティーがいくつかございます。」
メニューを見て、その色素の薄い茶色い目を見開いて
「たくさん…、あるんですね。」
彼女は言った。
「オーナーが好きなんです。コーヒーは胃に合わないとか言って。カフェのオーナーなのに(笑)」
「一緒だぁ…。ふふっ。」
2人でこっそり笑った。
それからしばらく、
「ゔ~ん゙…。」
とか
「あっ。でも…。」
とか言いながら、メニューとにらめっこ。
そして
「あっ……!!!!!!」
と、声をあげた。
「どうかなさいました?!」
今まで聞いた彼女の声の中で、一番大きな声。
驚いた。
慌てて向かう。
自分でも気がついたのか、恥ずかしそうに、声のトーンを落とした。
でも、かなり興奮してた。
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