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夏樹は下を向いて、静かに聞いていた。
ただ静かに聞いて、静かに泣いていた。
私が話しおえると、しばらく沈黙が続き、沈黙のせいで耳鳴リが始まった頃、夏樹は口を開いた。
「 いつかこうなる事は
わかってたけど...
急すぎて心の準備が
できてない
今日1日でいいから
児相に行くまでの
数時間を私に頂戴 」
その数時間で両親に、見つかってしまうかもしれない。
それでも私は、今までみたいに会えなくなってしまう夏樹との最後の時間をとった。
違う。 私も夏樹といたかった。
ここで親に見つかったとしたら、きっとそれは神様がそうした事だと、私の決意は間違っていた事になると思った。
私の部活用のバックには、数枚の着替えと財布。
格好は中学校のジャージ。
財布の中は3000円。
親から離れた私は、ほとんど何も持っていなかった。
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