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――――左目は"愛"
――――右目は"哀"
人間にはなくちゃいけないモノなんだ。
お前はそれを形に出来た事を喜ぶべきなんだ。
特別なんじゃない、本当の姿で生まれてきただけさ。
お父様がそんな話をしてくれたのは少し前の夜。
私が両目の色が違うのを理由にイジメを受けていたのを知ったからだろう。
少女は、朝食を食べている時、ふと、思ってしまった‥‥。
「ねぇ、お父様?」
少女はフォークとナイフをカチャカチャと鳴らしながら尋ねた。
「この間話してくれた話。」
―あぁ、"愛"と"哀"の事か?
「うん。私ね、哀しみって要らないと思うの。」
―哀しみが要らない?
少女は虚ろな目をして続ける。
「そう!だって愛だけなら皆幸せじゃない。誰も涙を流さなくて良いのよ?!」
―そんな事な‥
「じゃあ私は?!哀しみばかり!!お母様は病気で亡くなって!!!両目の色が違うだけで疎まれ!!愛なんてどこにもないじゃないの!!」
―それは違う、私は‥
「そうよ、哀を見なきゃ良いのよ‥‥。」
少女はフォークとナイフを見つめ、
―!!っやめろ!!
「愛だけなら幸せよね。」
ぐしゃぁ‥‥
少女はフォークで自分の右目を刺し、そのまま引き抜く。
「あぁ‥あああぁぁあ!!!」
ぶちゅぐちゅずりゅぅ、と神経を繋いだままの右目が姿を現す。
―あぁ‥‥あぁ‥‥
少女は、倒れ込む父を片目に、ナイフを手に持つ。
「これ、さえ切れ、ば‥‥」
手が震え、痙攣を起こしはじめる少女。
ぶちっ‥‥ぶちぃっ‥ぶちぃ‥
一本ずつ、一本ずつ、神経を切っていく。
「あ、あぁ‥‥嬉し、い‥‥見て‥‥お、父様‥‥哀、が消、え、ていく、わ‥‥」
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