悪意の始まり

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翌日、Tに電話をした。 それとなく話を切り出すとTの口調が変わった。   「はっ?知らねえよ。」   だが俺は現場を見ていた事を告げると、    「てめえ気に食わねえから今からみんなでやりにいくわ。逃げんなよ。」   今思うとくだらないが、当時高校生の俺には十分な恐怖だった。    その日から定期的に奴らは俺の家の周りをうろつくようになった。     学校にもTの仲間がいるため、あまり滞在しないようになり、昼間から奴らの行動範囲外の街で過ごすようになった。    家への帰宅途中に奴らに見つかり、半拉致状態になる事も数回あった。    奴らが無免許で乗り回している車の中に数時間、両脇を固められ逃げることも出来ずに殴られ脅された。   奴らは飽きると俺を解放した。    この生活は一年余り続いた。    俺の人格を曲げるのには充分な時間だった。    この頃から俺は人間を二種類に分けるようになった。  『敵と味方』『善と悪』と。   
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