煮干し

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1 私が終電を乗り過ごし、その臭く胸が苦しく成る駅から這いだすと、綺麗にオリオン座が煌めいていた。私は小さい頃から肺が弱く、喘息持ちだったのだ。その事に気付いた母は私のためによく「おろし蜂蜜」という大根をおろした物に、蜂蜜を混ぜたものを作ってくれたものだ。だからこうなった、と言うわけでも無いが昔から肌が白く、喘息に良いからと母が作る大根料理が手伝い、私の子供の頃のあだ名は「土大根」だった。今となれば良い思ひでだ。 そんな事を考える内にタクシー乗り場に、タクシーが今日の突然降った狐の嫁入りに、「汚された」と呟くようにやってきた。何かしらの動物が鳴くような音を立てて止まった。 ガチャリそんな効果音を立てて扉は開く。私はソファーに使い古しで少しボロくなった背広の端っこをおろした。 「どこまでです?」 「一分駅まで」 「お仕事は?」タクシーの男はにっと綺麗な歯を見せた。名札を見れば「岡崎」と書いてある。 「弁護士です」私も少し老けた目のしわを、ふんわりと折りたたむように微笑む 「わざわざこんな遠くまで?」驚きが隠せないと言う感じである。
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