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カランカランと軽快な音を立て扉は開く。「おお、充君久し振りやねぇ」
「何を言うねんおばちゃん、こないだ来たばっかりやろな」
「そうやったねぇ」その居酒屋のおばさんはにっこりと頬の肉を、重力に逆らい上げた。
「そっちのお兄ちゃんは、初めてやねぇ」
「あっ、はい」
「まぁ、ちっさい店やけど楽しんでいってねぇ」
「じゃあおばちゃんいつものやつ」岡崎は手の白い手袋を取りながらそう言った。
「そっちのお兄ちゃんは何にしとこう」
僕は戸惑いながら店内のメニューを見てこう言った「じゃあ、ジン・トニックで」
「了解、そういえばお兄ちゃん名前聞いてなかったねぇ」
「白石 祐太です」
「じゃあ白石君はもう良い年やし、親孝行とかしときやぁ、親は気付いたら死んどるもんやからな」
「僕親いないんですよ、父は離婚して居ないし、それから母は末期ガンだったんですよ、本当に気付いたら死んでいます」
「お母さんいつ亡くなったんや」
「中学二年の時です」
「そうか、悪いこと聞いたね」そういうおばさんの背中はあまりにも小さかった
「いえいえ、気にしてませんよ」
「はい、充君烏龍茶」
「それと、白石君ジン・トニックね」
「今日はおばさん奢ったげるわ」またにっこりと笑った。
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