出会い

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男を盾に扱っているのは八雲と同じ大学生の氷室亜輝だった。 「じゃああっちがお前の同級生か?」 「見れば一目瞭然でしょう 脳みそも退化しましたか?」 「こんのくそ餓鬼!!!」 「とりあえず…… あんた達は不法侵入で警察に通報していいのか?」 「残念だがこの人がその警察だ」 「……マジ?」 コクリと頷く八雲。 てっきりヤクザかと思ってた……。 「それで、そいつが君を狙ったのか?」 「ああ だが、俺はこいつと全く面識はない しかも真っ直ぐ俺の部屋に来たって事は目的は金でなく俺の命 しかも窓ガラスを割ったような音がなかった 玄関の鍵、開いてたんじゃねえのか?」 ああと男が頷く。 「……なるほどな…… まっ俺を殺せる奴がいるならぜひお相手したいもんだな なんの武術もならったこともねえような奴じゃ話になんねえ こいつみたいな奴じゃな」 ゴキッ!! 亜輝が盾に使っていた男が悲鳴を上げた。 目の前の光景に八雲と男は目を丸くする。 盾の男の肩が外れダラリと垂れ下がった。 そしてドサリと床に倒れ込んだ。 肩を外したのは他の誰でもない……亜輝だ。 その表情は八雲に見せた時のように無表情だった。「本当は四肢へし折ってやってもいいんだが…… 警察が居る目の前でやんのはな…… 今回は正当防衛だろ? お巡りさん」 ニコリと笑みさえ見せる。 言われた男は背筋がゾクリとした。 「俺はさ…… 人の命奪うっつー行為が一番許せねえんだ」 亜輝はガッと倒れ付している男の胸倉を掴む。 「誰かの命を助けるために誰かを殺す? 舐めた考えしてんじゃねえぞクソヤロー!!! 俺は構わねえよ 死んだって喜ぶような奴しかいねえからな けど…… 他の奴ならどうだ? そいつは大事な奴失うんだぞ? あんたの大事な奴失ったのと同じ痛みを相手に味あわせるつもりか?」 胸倉を掴みあげた男の瞳が大きく揺れる。 「お前の大事な奴がいなくなって…… その命が戻ってこねえように 奪った命も……二度と戻りはしねえんだよ」 亜輝を殺そうとした男は自分の犯そうとした罪の重さを理解し、声を上げて泣いた。 「……なあ、お巡りさん 今回のこと見逃してくんね?」 「ハア!?」 その言葉に言われた中年の男は盛大に驚きの声を上げる。
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