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「ごめんなさい私、岩谷君が好きなの……」
桜の花びらが散り始めた頃
幼なじみの大親友の名前を好きな子の口から聞いたのは3回目だ
「そっか、告白聴いてくれてありがとな」
笑ってその場から離れるのも、3回目
最初は幼稚園の時、同じ組のゆりちゃん
次は小学校の時、同じ飼育委員会の田中さん
そして今、隣のクラスの奈川さん
理由は全部……
「ひ~さん、どうだった?」
「……」
「無言!? ま・さ・か! とうとう!」
テンション高く俺にまとわりつく男
背はもう少しで180㎝の長身
ロン毛を後ろに括り、前髪をピンで留めている
たまにリボンを女子に付けられているが、格好良さに変化は無い
着崩した制服もかなり似合ってる
面白格好良いと評判でファンクラブが出来たり、ストーカー被害に合った事もある男『岩谷 和樹』
「無表情はヤダよ~! ひ~さん!」
「カズ……うざい」
「ガーン! ひ~さんが! うえぅっ」
一々オーバーアクションで抱き付いたり、ムンクの叫びを真似たり、泣き出したりって……
「泣くなよ」
「だってぇ、ぐずっ」
「はぁ、振られて気が立ってたんだよ。悪かったな」
「オレの事嫌いになった訳じゃなくぅ?」
「無い無い」
「ひ~さん!」
また抱き付いてきた頭を撫でて慰めるのは、幼稚園の時から変わらない
身長を追い越された後も俺の側から離れないヒヨコみたいな親友
母性本能がくすぐられると騒がれるが、俺の場合は父性本能だな
図体はでかくても運動が苦手で天然ボケな性格
何時も面倒を見てやるが、こいつ理由で振られ続けるのはキツい
「もう二度と告白なんかしない」
「ひ~さん……」
「なんでまた泣きそうなんだよ」
「オレのせいだろ、ひ~さんの良さが解んない面食い女子に当たったからって。青春放棄しないでよぉ」
「恋愛だけが青春じゃ無いだろ、高校に入ったらバイトして色んな事挑戦したり。それも青春」
「ひ~さん! 何処までも付いていくよ!」
「偏差値上げないと無理じゃね?」
「えっと……ひ~さん偏差値ちょっとだけ下げない?」
「ヤダ」
酸っぱいだけの中三の季節は過ぎて行った
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