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奈川さんに振られてから季節は過ぎて夏
俺の進路は『新羅高等学校』に決めた
家からも近く県内随一の進学校
東大に入る学生も多く、俺なら奨学金で入れると先生達も太鼓判を押した
何時もの様に自分の部屋で予習をしていると、一階のリビングから母さんの声が響く
「聖~! カズ君来たわよ!」
「ひ~さ~ん! あ・そ・ぼ♪」
ほぼ毎日カズが来るのも昔からだ
カズの家は斜め向かいにあるし、母さんにも気に入られている
「予習しときたいから遊びパス」
「そんな~! えぐっぐずっ!」
「聖! カズ君苛めないの!」
カズの泣き声に母さんの責める声、ため息をつきながら机の上を片付ける
この状態で予習を続けるのは無理だ
部屋を出ると隣の部屋から騒ぎを聞き付けた、妹の智佳が出て来た
「カズ君またわがまま言って! うるさい!」
一階に向かって文句を言うとカズが二階に上がって来る
「智佳ちゃんひどいよ!」
「何時もお兄ちゃん独占して! わがままじゃん!」
小学五年にもなって兄べったりの智佳は、カズが来る度に俺に抱きつき離れない
「お兄ちゃんの勉強の邪魔するなんて! 何考えてるのよ!」
「智佳ちゃんだって! スッポンみたいにひ~さんにくっついてるじゃん!」
「スッポンは噛み付いて離さないの! 智佳はお兄ちゃん噛まないもん!」
小学五年と同レベルで張り合うカズ
二人の闘いは俺が仲裁に入るまで終わる事は無い
「二人共落ち着け」
「だって智佳ちゃんが……」
「智佳我慢してるもん……」
涙目になる二人、考えて見れば最近勉強で智佳に構って無い
で、カズは俺と遊びに行きたいと
「なら3人で遊びに行くか?」
「「えぇー(智佳ちゃん・カズ)も一緒なの~!」」
息ぴったりでぶぅぶぅ文句をたれる
「俺の身体は1つしか無いの! 智佳とも久しぶりに遊びに行きたいし」
「お兄ちゃん! 好き!」
「うぅ~!」
「カズも唸るな、嫌ならパス……」
「しない! 遊ぶ!」
このやり取りも1カ月に一回はある
俺を取り合って何が楽しいんだか
2人に腕を引っ張られ、俺達は馴染みのカラオケ店へと向かった
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