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カラオケ店に向かう途中、道を曲がる瞬間女の子が突進してきた
「うわっ! 痛っ」
「きゃあ! 痛っい!」
カズと智佳に腕を捕まれていた為、避ける事も受ける事も出来ない
2人が離さなかったから、痛かったが俺は倒れず
女の子は跳ね返され尻餅を付いていた
「「(お兄ちゃん・ひ~さん)大丈夫?!」」
「俺より女の子の方が被害あったろ! だっ大丈夫かっ?」
2人から自由を取り戻し、女の子に手を伸ばす
立ち上がるのに手を貸そうとしたが、女の子は自力で立ち上がった
俺と同じくらいの年齢だろうか?
長い黒髪は揃えられ、可愛いから綺麗に変わる中間の美しい顔を見詰めた
見るからに高そうなワンピースを着こなし、初めて見た八頭身の人
綺麗だと思う
見惚れている内に女の子はお尻を払い、優雅な動きでお辞儀をした
「ぶつかってしまい、ごめんなさい」
「いえ! こちらこそ!」
顔が熱くなり、心臓がうるさい
あれ? 俺ってこんなに惚れっぽかったか?
差し出したものの行き場の無い手を振り
女の子の謝罪に続いて自分も謝るつもりだったが
女の子は急いでいたらしく走って行った
「ひ~さん、惚れた?」
女の子の後ろ姿を見続ける俺の顔を覗き込み、ニヤニヤとカズが笑う
「なるほど、お兄ちゃんは長い黒髪が好みなんだ。メモしなきゃ」
と智佳はポケットからメモを取り出す
「お前ら! 何言ってんだよ! 俺はただ……」
「「ただ?」」
「とっとにかくカラオケいくぞ!」
何て言えば良いか分からなくなり、強引に話題を変え2人を置いて走り出す
「まってよ! ひ~さん!」
「お兄ちゃんまって!」
カラオケ店に入ってしまえば、2人は歌に夢中になり女の子の事は話題にならなかった
でもそれからしばらく女の子の姿が頭から離れない
やっぱり一目惚れだったと考えて
忘れ様と勉強に打ち込んだ
もう恋なんてごめんだ
ましてや、また会えるかも分からない子を想っていても仕方ない
その後、カズと智佳が騒ぐと2人に勉強を教えた
構ってもらえれば何でも良いらしい、2人の成績もしばらくの間上がり続けた
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