一章

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女性はネージュがちゃんと毛布にくるまったのを見て、 「じゃあ私は向こうにいるから何かあったら呼んで頂戴」 と、部屋を出ていく。 一人になった部屋の中でネージュは小さく小さくため息をついた。 それは決して女性とのお喋りがつまらなかったのではなく、――むしろ逆なのだが――長時間雪を観ることの出来ない自分の身体へのため息なのだった。 ネージュの記憶はほとんどがこの部屋だけだ。 小さい頃に発作を起こし高熱を出して寝込み、以来ずっとベッドでの生活。 元気だった頃の記憶は高熱を出したショックからか失ってしまった……らしい。
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