一章

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両親の事すら覚えていない。ネージュに接する人はただ『不幸な事故にあってしまった』としか教えてくれない。 それはきっと彼らなりの気遣いなのだとネージュは解釈している。 そして、何かと世話をやいてくれるこの村の人達に感謝もしているし、彼らのおかげで寂しくもなかった。 けれど、何も出来ない己は歯痒く心苦しかった。 親切にしてくれる彼等の荷物にしかならない…なんでもいいから役にたちたい。 しかし、ネージュがそう伝えてもその気持ちが嬉しいとしか言ってくれない。 そんな時に、やはり自分は役にたてないのだと痛感する。 だから、なるべく明るく振る舞い笑顔でいることを己に強いた。 そうすれば心配はかけずにすむ。けれど、この身体はあまりにも脆弱すぎた…。 「だから……だから………」 静かな部屋に溶け込むネージュの言葉。 しかし、その先の言葉をネージュは首を振ることで留めた。 この言葉は口に出したらいけない――
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