112人が本棚に入れています
本棚に追加
「あのそれは?」
「組み立て式のテントだよ。さっきお客さんに君にって」
「む。まさか昨日の今日で借り作っちまうとはな」
若干太一は悔しくなったが、女将さんがテキパキとテントの準備をし始めてくれたのを見て自分も手伝わずにはいられなかった。
女将さん曰わくテントを張るのはなるべく開けた場所が良いとのことで、太一は昨日自分が丸まっていた川縁の一歩手前の河原を拠点とすることに決めた。
「あ、私も手伝う!」
「いいけどガキがあんまり無茶すんなよ?」
「ふふっ大丈夫ですよ。組み立てるだけのドーム型テントだから子供でも」
ということで三人がかりでテントの組み立てが始まる。
確かに女将さんの言う通り従来の三角型のテントと違って骨組みを組み立てるだけの簡単な作業だった。
その間に優奈が部品をなくしたりと色々あったが、どれも微笑ましい光景で許せるものだった。
後は防水布を骨組みに結びつけ、四隅に重石を置けば完成らしい。
「ふぅっ。じゃあ俺は石とってきますね」
「ああ、ちょっと待って。これもどうぞ」
言われて振り返ると女将さんが何個かラップにくるまったおにぎりが入ったビニール袋を差し出していた。
「これも同じお客さんから」
「うぐ」
またも急所を疲れた気分になったが腹が減っているのも事実だったため、素直に太一は袋を受け取った。
最初のコメントを投稿しよう!