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その傍らで手をメガホン代わりにして「カンガルー何故お母さんを選んだのー!?」とマジで聞いている少女が一人。
この子のリアクションはやはり天性のものだ。
「が、それは暫定の話だ」
「暫定?」
「うん。このまま放っておけばカンガルーはやがてゴリマッチョのボディービルダーの悪霊に変わる」
「な、何故!?」
「知らん。ゴリマッチョのボディービルダーに聞いてくれ……いちいち叫ばなくて良いぞ」
優奈を制しながら太一は続けた。
「だがまあ、それはこのまま放っておけばという話な」
「じゃあどうすればお母さんをゴリ(略)から救えるの?」
太一は良い流れだと思う。
「簡単な話だ。お前のお母さんを元気づければ悪霊はいなくなる」
「元気づければ…」
「うん」
太一はずっと考えていた。
どうすれば彼女を救えるのかということを。
ミサ曰わく、土壇場で人を救うのは無理らしい。運命の力は絶対だとも言っていた。
となれば結論は簡単。
彼女を元気づけ、特に心を『健康』にしてやればよい。
自殺にしろ病死にしろ、人の心の健康はその二つに大きな影響を与える。
健全な心の持ち主は自殺なんて考えないし、『病は気から』という言葉もあるからだ。
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