LIVE6/Voice and cry2/2

22/32
前へ
/117ページ
次へ
 その傍らで手をメガホン代わりにして「カンガルー何故お母さんを選んだのー!?」とマジで聞いている少女が一人。  この子のリアクションはやはり天性のものだ。 「が、それは暫定の話だ」 「暫定?」 「うん。このまま放っておけばカンガルーはやがてゴリマッチョのボディービルダーの悪霊に変わる」 「な、何故!?」 「知らん。ゴリマッチョのボディービルダーに聞いてくれ……いちいち叫ばなくて良いぞ」  優奈を制しながら太一は続けた。 「だがまあ、それはこのまま放っておけばという話な」 「じゃあどうすればお母さんをゴリ(略)から救えるの?」  太一は良い流れだと思う。 「簡単な話だ。お前のお母さんを元気づければ悪霊はいなくなる」 「元気づければ…」 「うん」  太一はずっと考えていた。  どうすれば彼女を救えるのかということを。  ミサ曰わく、土壇場で人を救うのは無理らしい。運命の力は絶対だとも言っていた。  となれば結論は簡単。  彼女を元気づけ、特に心を『健康』にしてやればよい。  自殺にしろ病死にしろ、人の心の健康はその二つに大きな影響を与える。  健全な心の持ち主は自殺なんて考えないし、『病は気から』という言葉もあるからだ。
/117ページ

最初のコメントを投稿しよう!

112人が本棚に入れています
本棚に追加