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常盤沢江に元気がないのは傍目から見ても明らかだった。
如何にも薄幸そうな姿はよく思い出せる。
しかし、彼女は優奈の実の母親だ。元はきっと元気ある溌剌とした女性に違いない。
それこそ『夢はたくさん持ちなさい』と言うくらいに。
その状態に彼女を戻せれば話は変わってくるだろう。
勿論不安もある。
例えば不慮の事故など最悪の結果だった。これだけは常に気を配るしかない。
が、元は複数ある死因のいくつかが消去できるのならば話は即決即断だった。
「優奈の母さん、なんか落ち込んでたじゃん。ああいうネガティブが悪霊を呼び寄せるんだ」
「お兄さん詳しいんだね~」
「霊感強くてな。まあ俺のことはどうでも良い。それより心当たりはないか?」
「うーん…」
優奈は考え込みながら、と思ったらばっと顔を上げた。
「そういえばお母さんうつ病っていう病気らしいの」
「うつ病…」
(自殺の線が濃いが、喜んだ方が良いのかもな)
「分かった。じゃあ早くうつ病を治してあげるのが今回のミッションだ」
「うん!悪霊を追っ払うためだもん!頑張る!!」
「…そうだな」
そう、これは悪霊との戦いだ。
常盤沢江に刻々と近づく『死神』をブチ殺す戦い。
負けるわけにはいかない。
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