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「で?どうすればいいの?」
「……まずは及第点からか」
意気込みは良いが問題はその後だ。
と言うのも、太一はうつ病をよく知らない。
精神の病であることは知っているものの具体的にどう接すれば、まして治療の仕方などてんで話にならなかった。
ただ励ませば良いというわけではないだろう。
アットホームな環境でゆっくりと療養し治していくもの……勝手なイメージばかりが先行する。
「はぁ~。たくお兄さんは肝心な所で使えませんなー」
「返す言葉もねーよ」
「あり?そこは大人気なくキレるシーンじゃない?」
「……いや、本当にそうだからな」
太一が思い浮かべたのはもっと早くに家を出ていれば助けられたかもしれないとある駅員。
彼の胸には罪悪感と同時に決意がわく。
今度こそ救う、と。
「ま、恐らく今回俺の出番は少ない。いきなり現れた高校生に励まされたとしても簡単に治る病じゃないだろうからな」
「じゃあどうすんの?」
「簡単。こういうのは家庭の力が強い(多分)。だから優奈の母さんを励ますのは優奈自身の役目ってことだ」
「えー。でもでも私だって結構色々やってきたんだよ?」
「そこを鍛えんのが俺の役目だ」
「おおー!!」
優奈がおもむろに手を挙げる。
「師匠と呼んでくれても良い!」
「はい師匠!!」
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